小林えみのブログ

本の紹介やその周辺、社会のこと

2024-01-01から1年間の記事一覧

名付けられていなかったもの、奪われた言葉、失われた文体

山内尚さんの『ノンバイナリースタイルブック』の展示最終日に、山内さんと、『シミズくんとヤマウチくん』の共著者である清水えす子さんがマルジナリア書店にお越しくださった。お二人はとても丁寧にお越し下さった方たちとお話しになられ、私もとても良い…

「出版産業・書籍関係業界全体」と「複本問題という一部の出版社のキャンペーン」

想像力は力だ。将棋棋士・藤井聡太さんによる、長い歴史の検討を超えた思わぬ一手が人を惹きつける。それは私たちが今と違う未来を想像できることをおしえてくれる。 一九九六年をピークに、出版販売額の右肩下がりはずっと続いている(『出版指標 年報 2020…

「セーファースペース」と名乗るかどうか カタカナ語へのためらい

「マルジナリア書店はセーファースペースですよね」 とお客様に何度かお話の中でお尋ね頂きました。 セーファースペースとは「差別や抑圧、あるいはハラスメントや暴力といった問題を、可能な限り最小化するためのアイディアの一つで「より安全な空間」を作…

独立系書店・棚をめぐるメディアと書店業界の「女性」の扱い

イベントに登壇しました。【『しししし5』(双子のライオン堂) 刊行記念 本屋は本屋の棚をどう見るか?トーク編】 『しししし5』に「本屋は本屋の棚をどう見るか?」という企画があり、その企画内記事4本がすべて男性であることから、トークイベントでは、…

『あの子もトランスジェンダーになった』刊行について

KADOKAWAで刊行が中止となった『あの子もトランスジェンダーになった』が産経新聞出版から刊行されることになったそうです。 https://www.sankei.com/article/20240305-KKZ57HKC2JGM7FNCO6BTPPCNHQ/ 刊行の経緯が産経新聞で記事となっています。「容易に性別…

書店振興支援のニュースについて

2024年3月5日(火)読売新聞に下記の記事が掲載されました。「書店振興プロジェクトチーム、斎藤経産相が設置表明…「創造性が育まれる文化の創造基盤」」 https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/articles/20240305-OYT1T50060/ 支援があるってよさそう、と…

社会の移行期間で見る『不適切にもほどがある!』2

以前、4話までをみて、下記、雑感をまとめていました。 社会の移行期間で見る『不適切にもほどがある!』 - 小林えみのブログ 引き続き、状況は同じで、視聴率は好調、一方で多くの批判があがっています。SNSを中心に、目を通しており、大半は私も同意できま…

これからの哲学を考えるイベント ローティとハイデガー、朱喜哲と池田喬

朱喜哲さんと池田喬さんのトークイベントが2024年3月5日に開催される。 honto店舗情報 - 【19:30開演】 『人類の会話のための哲学』『ハイデガーと現代現象学』刊行記念「ローティとは何者か」 こちらは是非ご覧頂きたく、今回のイベント開催にあたっての所…

うそっこばなし

私が小説を書くのは、昔から「うそっこばなし」をしていたからだ。それは単純な「嘘をつく」とは違って、架空の話、物語をまぜこむということだ。たとえば、親にだまってプリンを勝手に食べ、「食べたでしょ?」と聞かれて「ううん、食べていない」と答える…

マルクス・ガブリエル氏の記事に関して

私はガブリエル氏の書籍を編集担当したこともありますが、この記事を読み、ガブリエル氏に私はこの主張を支持できない、というメールをお送りしました。 【ガザでの虐殺 反ユダヤ主義復活に警戒 独哲学者、ボン大教授 マルクス・ガブリエル】https://sanin-c…

社会の移行期間で見る『不適切にもほどがある!』

宮藤官九郎が脚本執筆の『不適切にもほどがある!』、世間的には面白く見られているようです。参考▼ 阿部サダヲ『不適切にもほどがある!』劇中のイジリに反してコア視聴率&TVer冬ドラマ1位の適切結果!昭和と令和の対比が平成世代に刺さった|ニュース|ピ…

2月11日府中市図書館講演 オススメ本リスト

2月11日に府中市立中央図書館で講演をさせて頂きました。お越し下さったみなさま、企画のみなさま、ありがとうございました。その講演の中でご紹介したオススメ本リストを公開いたします。 【仕事と生活】 マルクス・アウレリウス『自省録』岩波文庫賢帝とし…

SNSの運用について

以前、鷹野凌さんに教えて頂いたように、今後は分散型になっていく流れのようです。ただ、それがどういうことか、日本語であんまりうまく説明した記事がなく、私も人に話すときにモゴモゴしていたので、これはスレッズの例として書かれていますが、今後のSNS…

【TAKIBI閉店のお知らせ】を見て

開店時は借り入れも利用して、ほんとうに書店って儲からないな、と四苦八苦しながらマルジナリア書店は3年目を迎えました。 若い人が資金もなく、クラファンを利用して、半年頑張ったけどやっぱりダメだった、というのであれば「大変でしたね、また頑張って…

隣人のために

※以前書いたものだが、はてなブログの仕様をあまりよくわかっておらず「ブログが分かれてしまっていた」ため、もうひとつのブログを閉鎖し、転記公開をする。元記事はkoba-editor.hatenadiary.com というアカウントに2022年8月5日に記載していた。 ベルリン…

『Bread&Butter』芦原妃名子

芦原妃名子さんの作品を最初に読んだのは『砂時計』だ。子どもの頃の成長から大人までしっかりと繊細な心模様の「時間」を描く、とても上手な作家さんで、好きな作品の一つだった。 20代半ばくらいから漫画はいくつか雑誌で読むようになり、『Bread&Butter』…