小林えみのブログ

本の紹介やその周辺、社会のこと

『あの子もトランスジェンダーになった』刊行について

KADOKAWAで刊行が中止となった『あの子もトランスジェンダーになった』が産経新聞出版から刊行されることになったそうです。

https://www.sankei.com/article/20240305-KKZ57HKC2JGM7FNCO6BTPPCNHQ/

刊行の経緯が産経新聞で記事となっています。
「容易に性別変更できてしまう米国の実態が紹介されており、手術などで回復不可能なダメージに後悔する少女らを取材している。」とされていますが、その誤りについては、すでに米国での指摘されています。
KADOKAWA出版予定だった本の6つの問題。専門家は『あの子もトランスジェンダーになった』は誤情報に溢れていると指摘》

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_65792b28e4b0fca7ad228fef

そしてこちらには「だがそれよりなお恐ろしいのは、子どもの性自認を拒絶せよと親たちに説いていること。それこそがまさに、トランスジェンダーの子どもたちの自殺未遂の最大の予測因子の一つであるにもかかわらず。」
と、子どもたちの命の危険についても指摘がされています。

トランスジェンダーや性的マイノリティの死亡が有意に高頻度であることは証明されています。
トランスジェンダーは自殺死が多いか/JAMA

https://www.carenet.com/news/journal/carenet/56760

性的少数者の自殺リスクその背後にある「生きづらさ」とは

https://www.tokyo-jinken.or.jp/site/tokyojinken/tj-57-feature.html

【調査速報】10代LGBTQの48%が自殺念慮、14%が自殺未遂を過去1年で経験。全国調査と比較し、高校生の不登校経験は10倍にも。しかし、9割超が教職員・保護者に安心して相談できていない。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000047512.html

なお、これらに対して、ホルモン療法の方に原因があるとする意見も散見されますが、それらが誤情報であることもすでに指摘されています。
トランス女性へのホルモン療法で「メンタルヘルスが悪化する」は本当?原因を“単純化”する危うさ

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_64b8949de4b093f07cb2d76c

「ryuchellさんの死とホルモン治療についての誤情報」稲葉可奈子

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=22471


ある論について反対の論が出るということ自体は、あり得ることであり、それが阻害されるべきではないことは民主主義の根幹です。
しかし、それはただ単純にどこでも、どういった形でも公表されうる、ということではありません。
トランスジェンダー差別の多くは、女性の男性社会への不信を、歪んだかたちで標的化し、はけ口にしています。
正確な情報を発信し、誤った情報で不安を感じる人たちに不安を解消する手を差し伸べることこそ、メディアがなすべきことではないでしょうか。
「虚偽情報にあふれている」ということがすでに指摘されている書籍を、あえて商業的に流通させることには、いたずらに人々の危機感をあおり、その危機感へ付け込む不安産業ではないでしょうか。
女性の分断をまねくトランスジェンダー差別、またそれをいたずらに商売とする行為は許しがたいものです。

トランスジェンダーを受け入れがたい、あなたたちの不安の根幹はほんとうにトランスジェンダーのことですか?

 

あしたは国際女性デーです。
すべての女性が幸せに生きていけることを願っています。