小林えみのブログ

本の紹介やその周辺、社会のこと

書店振興支援のニュースについて

2024年3月5日(火)読売新聞に下記の記事が掲載されました。
「書店振興プロジェクトチーム、斎藤経産相が設置表明…「創造性が育まれる文化の創造基盤」」

https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/articles/20240305-OYT1T50060/

 

支援があるってよさそう、と思われがちですが、実際の現場の意見は割れています。
私も現状、反対の立場です。


反対の意見をいくつか紹介します。
蟹ブックス・花田菜々子さん
「書籍の売上の10%を助成してくれればそれでいい!成功事例とかはみんなもう共有し合ってるから大丈夫。国が文化や芸術を助成するのは当然のことだと思うので日本でもぜひ実現してほしいが、しょうもないパンフとCM作って自民党が中抜きして終わりにならないか心配。」2024年3月6日午後0:43

https://twitter.com/hanadananako/status/1765221599526220075

青山ブックセンター・山下優さん
「書店が日々厳しくても国に頼るのは違う気が。 「優れた事例を共有し、支援策の参考にする。」立場や立地が異なるのにただ優れた事例を真似しても全く意味がないし、今の時点でそもそも真似というかそういう要素を自店なりに取り入れたり解釈できていないお店を残す意味もないと思う。」2024年3月5日午後10:27

https://twitter.com/YamaYu77/status/1765006253292650831

▼ポルベニールブックストアさん
「新刊書店が減った根本的原因は平均22%と言われる書店マージンの薄さに尽きるので、書籍販売の粗利改善に手を付けなかったら、何やったって小手先の対策に過ぎないの! あと活字文化を本気で守るなら、イギリスみたいに新聞・書籍に関する消費税をゼロするのが効果高いよ!」2024年3月6日午後2:44 · ツイート

https://twitter.com/porvenir_books1/status/1765252079839523158
▼すずきたけしさん
「うーん、物流やRFIDタグといった商流のインフラに支援したほうが良いと思う。」2024年3月6日午前11:52 以下、関連の4投稿

https://twitter.com/takesh_s/status/1765208922049446292
▼本屋lighthouse さん
「昨日あたりから話題になっている、政治による書店支援プロジェクトやらなんやらですが、支援の中身云々以前に「誰が主導しているか」を把握することがまず大事です。…以下略…」2024年3月6日

https://lighthouse226.substack.com/p/240324-30
それぞれ視点は異なりますが、「別のことが書店にとってありがたく、今回のような支援が喫緊の問題ではない」という認識が共通しています。
私もこれに同意です。


ニュースに関連して、一時、上場されている書店の株価もあがったようです。
書店の文教堂丸善CHI、トップカルチャーなどが10時過ぎ位から強く上げましたね。…以下略…」2024年3月5日午後1:58 ·

https://twitter.com/senri_toushi/status/1764878098582151405

 

書店減少に対して、なんらか対策があったほうがよい。
この前提は共有できる部分です。
しかし、実際に「現場」求められているニーズと合致しているのか。
経産省のチームはきちんとヒアリングをして頂きたいですし、このニュースをご覧になった本好きのみなさんが「本屋の支援いいね」とお感じになることはとても嬉しいのですが、実際に「本屋の支援になるのか」は、よく注視していただけると幸いです。

 

私の懸念点は大きく下記2点です。
①今のでている記事での内容だとコンサルやDXなど中間業の支援にしかならず、現場の支援にならないのではないか
②上記の一部業種、また書店も一部のみこまれたところへの利益にならないのではないか、またその際に「条件」をのまされるのではないか

 

①については、他の方からの指摘とも共通しています。

②については、まだ現状の記事からは判断しかねますが、いわゆる「毒まんじゅう」、一見魅力的だけれどその中にもっとリスクの高いことが含まれている、というケースを警戒しています。
太平洋戦争時の言論統制をおこなったとされる鈴木庫三を描いた『言論統制: 情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』中公新書、2004年 という書籍があります。
鈴木氏がさまざまな政策に関与したことは確かなのですが、人間ひとりの思惑や政策判断だけでできることは、実はそんなに多くありません。
物事がすすんでいくときには、そのことを内面化した様々な人や機関の協力がなければ、うまくいきません。それらに「忖度」したり、都合よく利用する者がいて成り立つことの方が多く、当時の「言論統制」もそのように成立したと思われます(だからといって、その旗振りが免罪されるということではありません)。

書店をもつ会社が、版元が、あるいは関係者が、今後どのように反応していくのか。

私はそこをよく見ていきたいと思います。

3月6日22:41追記
こんなことすでに書いていました。嫌な予感ほどよくあたる、というやつでしょうか。
「【街の本屋、日本では減り続けるが…韓国では支援充実で増加傾向】

https://www.yomiuri.co.jp/culture/20230510-OYT1T50322/?fbclid=IwAR21qv4LQg2k7QBDM9drt8U88K2QayiUIi5szdtPOFHwBtQRNrhTobggunw

こういう記事がでると「書店にも支援を」という話になると思いますが、個別の業種優遇ではなく、消費税減税をして国民全体の負担を減らしてもらったら書店も助かりますよ。政治家のみなさん、よろしくです。」2023年5月15日午後5:30 

https://twitter.com/marginaliaBS/status/1658027164535783425